今回は、起業後にこんなはずではなかった。。。
とよく陥りがちな、「役員報酬」についての3つの注意点に関して
触れてみたいと思います。
単に事業を始める社長様方は、
月○○円くらいでいいかな?、と安易に決めてしまいがちな
役員報酬ですが、下記内容をしっかり把握した上での、
役員報酬額の決定・改訂をお勧め致します。
①【役員報酬額を変更したい!】
・役員報酬の毎月支給する給与は毎月定額でなければ原則損金算入されない。
・同族会社においては不定期・変動する役員報酬は一定のものを除き損金不算入。
単に役員報酬を変更する場合には、事業年度開始3月以内
(4月1日~3月31日事業年度の会社の場合には4月~6月末までとなります。)
に変更しないと、変更後の増額又は減額された部分は損金不算入となります。
役員報酬を変更する場合には、次の3パターンの場合のみ不定期な給与として取り扱わないことされています。
■事業年度開始3月以内の変更
事業年度が開始して3月以内に役員報酬を変更し、
かつ株主総会等の決議を受けている場合
■臨時改定事由による変更
役員の職制上の地位の変更(代表取締役の変更など)など
職務内容に重大な変更があった場合
■経営状態の著しい悪化による変更
会社の経営状態が著しく悪化した為役員報酬を減額した場合
(単なる売上の減少や一時的な資金繰りの悪化ではこの事由にはあたらないとされています。)
②【家族や親類を役員にして報酬を支払う】
家族を役員にして報酬を払っている会社は多いと思います。
ただ、役員報酬は大きすぎると、過大な部分は否認されます。
過大かどうかの判断は、法的な手続の妥当性を問う形式基準と、
職務の内容等を考慮する実質基準から判断されます。
株主総会議事録等を整備し、
かつ、職務の内容を明確にしておく必要があります。
ただ、多少、職務の内容があいまいであっても、年間の報酬が、
約200万円ぐらいまでであれば、否認されることはまずありません。
例えば、平成17年12月19日の裁決では、
よき相談相手という曖昧な役割りしか果たしていない母親に対する適正な役員報酬は、
年額186万円とされました。
ご家族を非常勤役員にして役員報酬を払う際の目安としてください。
もちろん、会社への貢献が明確であれば、
より高額な役員報酬を払っても問題はありません。
③【役員報酬を未払のままにしておいたら否認される?】
役員報酬の全額を払わずに一部の金額を未払いにしている会社は少なくありません。
それが、資金繰りが逼迫しているためであれば、税務上は、問題がありません。
合理的な理由があるからです。
ただ、7月と1月の源泉税の支払前であれば役員報酬を、
バックデートで調整できると考えて処理しているのなら、それは、誤りです。
定期同額以外の部分、すなわち、未払計上しておいて後日に一括して支給した部分は、
賞与とみなされ、損金になりません。
中小企業の経営は不安定で過酷です。
決算状況に合わせて事後的に役員報酬を設定したいという心情は理解できますが、
この処理は、数度にわたって国税不服審判所で争われ、いずれの裁決でも納税者敗争となっています。
税理士でも誤解している方がいるようですが、税務的には認められない処理ですのでご注意ください。